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Project | 01

​光合成の環境適応の実体を探る

​* こちらの研究内容は現在は行っていません。技術的なサポートに基づく共同研究のみ実施可能です。
地球が誕生してから46億年が経過したと言われています。多くの人が知っているように、地球には数え切れないくらいの多様な生物が存在しており、この多様性を生み出すきっかけとなったのが、おおよそ27億年前に誕生した酸素発生型光合成です。つまり、光合成生物は地球史の半分以上もの間、現在に至るまで光合成を行い続けていることになります。この地球の根幹を支えている光合成反応は、古くから多くの研究者の興味を引きつけ、そのメカニズムの解明が進められてきました。
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最近では、受け取った太陽光エネルギーを用いてどのように酸素を作り出し、また二酸化炭素を吸収・固定するのかについて、分子レベルで明らかになりつつあります。その一方で、光合成生物である植物や藻類が自然界において刻々と変化する環境にどのように適応しているのかは未だ多くの謎が残されています。
風による木々の揺らめきに伴う木漏れ日の変化や、雲の切れ間からの太陽の光を思い浮かべると、自然界における光の変化は目まぐるいことが分かります。このような光の変化は、季節、日周に伴う環境変化と比べて、とても短い時間(数秒から数分)に発生するため、光を利用する植物や藻類は“環境変化が起きたまさにその時”に対応しなければなりません。
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* himacバイオ遠心事例集へ寄稿した内容より抜粋
特に森林の中の地表付近や、曇り空が多い地域などで比較的弱い光の下で光合成が行われている場合、突然降り注ぐ木漏れ日や雲の切れ間からの直射日光は、瞬間的に過剰なエネルギーとなり、光合成生物にとって深刻な被害をもたらしかねません。このような危険を回避するために、地球上の光合成生物は、急激に変化する光環境下において過剰な光エネルギーを受け取った時のみ光合成反応に利用せず消去する仕組み(光防御: qEクエンチング)を備えています。光防御は、過剰な光エネルギーの一部を熱エネルギーへと変換して散逸させることで、光合成反応系への負荷を回避するメカニズムです(下図)。この光防御メカニズムは数十年以上前から知られていましたが、その分子メカニズムには謎な部分が多く実体解明が待ち望まれていました。
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* 日本光合成研究会“光合成研究”へ寄稿した内容より抜粋
私はこれまでに、大量に培養した緑藻から『生きた状態』の光合成タンパク質複合体の精製手法を開発*し、最終的に光防御が光化学系IIと呼ばれるタンパク質超複合体の中で起きている*ことを突き止めました。現在は、光合成タンパク質超複合体の精製手法を日々アップデートし、様々な光環境適応メカニズムを担うタンパク質超複合体の精製とその解析を進めてきました。
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* 2012年に報告した「緑藻類から巨大な光化学系を精製する手法」で明らかにした光化学系構造。
今や世界中の研究者らが同様の手法を使って複合体精製を行い、最先端の構造解析を進めています。
日本光合成研究会“光合成研究”へ寄稿した内容より抜粋

これらの研究は下記サポートを受けて進めました。

  • ​文部科学省 科学研究費補助金 若手研究A(代表)

  • 文部科学省 科学研究費補助金 研究活動スタート支援(代表)

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