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Project | 02
植物の陸上進出のきっかけは?
我々が普段目にする陸上植物は、どのようにして陸上に進出できたのでしょうか?実は、植物たちの陸上化の第一歩を可能にした要因は分かっていません。
現在私たちが目にする陸上植物たちと、その共通祖先に近いとされる緑藻類との大きな違いは乾燥耐性や重力耐性の獲得にあります。これらの耐性は、陸上化後に段階的に強化された形質であるため、陸上化そのもののキッカケを説明するものではありません。
植物の陸上化の始まりはおおよそ5億年ほど前と考えられています。それまでの地球環境の変化に着目すると、酸素発生型光合成の誕生により待機中の酸素濃度が上昇し、オゾン層が形成されたと言われています。
オゾン層により、生物にとって危険な紫外線(UV-B/C)は地表から大幅に減少したと考えられていますが、全ての紫外線が排除されたわけではありません。
そのため生物が陸上に進出するためには、まず地表や水中にまで到達する長波超の紫外線、つまりUV-Aの感知と耐性を獲得する必要があったと予想できます。
これまでの先行研究からは、陸上植物では表皮を覆うクチクラの形成や紫外線吸収物質の合成により紫外線耐性を強化したと考えられていますが、その仕組みの獲得起源は明らかになっていません。さらに付け加えると、水中に生活圏を持つ藻類などの光合成生物の紫外線応答・耐性に関する知見は少なく、その存在や機能については殆ど分かっていません。
このような背景に基づき、私は「現存の陸上植物たちの共通祖先に近いとされる水圏藻類の紫外線応答・耐性因子の発見、機能解析こそが植物の陸上進出のキッカケを紐解く鍵となる」と考えています。
この研究では、陸上植物と共通祖先を持ち、なおかつ地球上のあらゆる場所(水中のみならず土の中や氷の中)に生息する“部分的に陸上化を果たした光合成生物”ともいえる緑藻(Chlamydomonas種)を使っています。このユニークな特徴を持つ藻類の紫外線応答・耐性因子の発見と、その分子メカニズムを解き明かすことを目標として研究を進めています。
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